私は現在、岡山県の倉敷中央病院で2年目の内科系研修医として働いています。
来年度からの進路を選択するにあたって、卒後3年目で専門科を選択するか、それとも専門分野に入る前に内科全般の知識をもっとつけるべきかで迷いがあり、循環器に加え内科全般の知識を広く持たれている伊賀先生にお会いできれば何か示唆をいただけるのではないかと思い先生の診療所を見学させていただきました。
伊賀先生が兵庫医科大学で5年生の学生さんにされた講義に同席させていただきました。 系統立てた診察の重要性を強調なさっていて、今までの自分の診察が、いかにその患者さんから何か重要な所見を引出せないか、という真剣な態度が足りなかったかを再認識しました。また異常所見を発見するにあたって、多くの正常所見に触れることがどれだけ大切かということも実感しました。学生さんも、正常所見と異常所見を把握せずにベッドサイドに行くことがいかに倫理的に問題かを理解し、伊賀先生の講義に参加する姿勢がより真剣な態度に変化してきたのが感じられました。
講義の後で伊賀先生の診療なさる様子を見学させていただきました。完全房室ブロックでペースメーカー植え込み後の患者さんの聴診所見をとらせていただき、私は最初S1の変動、S2の吸気性変動が指摘できませんでした。伊賀先生に教えていただき再度確認すると聴診でき、正常S1,S2を聞く絶対数が少ないにもかかわらずS1,S2正常、といわば枕詞のように言っていた自分の態度を反省しました。また所見を病態に照らし合わせて説明する、という作業が欠けていることも痛感しました。
将来どの内科を専攻しても、各科の専門医である前に内科医であり、自分の患者さんの内科的疾患を可能な限り把握した上で必要な時に専門医に相談できるようにならなければ、と強く感じました。将来の進路を考える上だけでなく、日々の臨床における考え方や姿勢を学ばせていただいたという点でも、伊賀先生にお会いできて得たものは数多くありました。
半日という短い時間ではありましたが、貴重な体験をさせていただきました。
本当にありがとうございました。
 
私からのコメント
患者さんは洞調律をのこしてVVIペーシングされている患者さん。研修医がきているので診察させてほしいと電話できてもらいました。S2がきれいにparadoxical splitしているのを、私の聴診器できいてもらうと理解されました。この所見から、左脚ブロックがあるのを言い当てる必要はないけれど、注意してきくことでS3やクリックを検出することができます。
患者さんは若い先生方に所見をとってもらい、いい医者になってもらい、自分の孫たちに還元してもらうことを期待しているといわれました。
所見のある患者さんは研修医や学生さんにそんなふうに思っているのですよ。 2006-9-8